トリコモナスの症状や感染経路、治療や治療薬を徹底解説！

膣トリコモナス症（以下トリコモナス）は、膣トリコモナス（Trichomonas vaginalis）原虫による感染症で、主な症状としては、男性は尿道炎や前立腺炎、女性は膣炎を引き起こします。

トリコモナスは、性感染症の中でも最もポピュラーな分類にあたります。日本では減少傾向とあるものの、再発を繰り返す難治症例も少なくありません。感染者の年齢層が他の性感染症と異なり非常に幅が広く、中高年者の感染者もしばしば見られます。

今回は、トリコモナスの症状や感染経路、トリコモナスの検査や治療に関して詳しく解説したいと思います。

トリコモナスの症状や感染経路について

トリコモナスの主な症状と潜伏期間

トリコモナスの主な感染経路

トリコモナスの主な感染経路は性行為（セックス）です。女性はトリコモナスに感染している男性との性交渉、または下着やタオル、浴槽を通じて感染しますが、男性は通常、トリコモナスに感染している女性から感染します。

女性の場合は腟や子宮の入口（子宮頸管）、男性の場合は前立腺や精のうに寄生しているトリコモナス原虫が、精液や腟分泌液を介するなどして感染します。

トリコモナスを感染する方の特徴

膣トリコモナス症は、感染者の年齢層が他の性感染症と異なり非常に幅が広く、中高年者の感染者もしばしば見られます。日本では女性の5～10%、男性の1～2%が感染しているといわれています。

世界保健機関（WHO）が2016年に15歳～49歳を対象にした調査報告によると、全世界では1億5600万人とクラミジアや淋病よりもはるかに多くの人が感染しているという結果が出ています。微生物が原因であるトリコモナス症は、性行為を行っていなくても不衛生な環境下で感染する恐れがあるためです。

日本では衛生環境が比較的整っているため、そこまで感染者数は増加していませんが、使用済みの下着を使い回すような不衛生な環境下での生活によって感染する可能性が高まります。逆に衛生的な環境が整っていることで、まずセックス以外の経路からの感染は起こりにくいと言えるでしょう。

トリコモナスを治療せずに放置すると…

男性の場合、尿道への感染だけの場合は、排尿により洗い流される可能性があります。 性行為の後に排尿することである程度の予防になるとも言われています。

トリコモナスに感染している男性は、前立腺や精のうに寄生していることが多く、それが原因で尿道炎や前立腺炎を起こすとされています。しかし、症状が表れないケースが多いため、知らない間にパートナーに感染させてしまうリスクもあります。

女性の場合、黄緑色の泡状でニオイが強いおりものが特徴があります。トリコモナス腟炎を放置すると、症状が一旦よくなっても再発を繰り返すことが多いため治療をせずに放置することはたいへん危険です。炎症が腟内だけでなく卵管や骨盤内にまで波及することで、重要な部位に癒着が生じて将来的に不妊症になるリスクが上昇するだけではなく、流早産につながるリスクも増える場合があります。

トリコモナスの検査方法や費用について

トリコモナスの検査方法や検査が可能な場所、検査にかかる費用について説明します。

トリコモナスの検査方法

尿道の膿汁、または膣の分泌物を採取し、無染色標本を作成して動いているトリコモナス原虫を顕微鏡で確認する、もしくは培養検査を行って診断をします。

しかし、検体が検査所に着く前にトリコモナス原虫が死んでしまい検出できないケースもあるため、トリコモナスの生死に関わらず、残存しているトリコモナス原虫の遺伝子を増幅させて検出する核酸増幅法（PCR法）を取り入れて検査するケースもあります。

トリコモナスの検体の採取方法

男性器	尿検査（初尿）または分泌物（膿） ※よく健康診断などでは排尿の中間あたりの尿を検査しますが、それは余計な異物が混入しないようにするためです。性病の検査はその『余計な異物』を検査するため初尿をとります。
女性器	膣内の分泌物・膣ぬぐい液 ※膣内に細長い面病のような物を挿入し、膣の中の分泌物を採取し検査します。

トリコモナス検査ができる場所や方法について

トリコモナスの検査ができる場所は、主に病院か保健所、郵送検査である性病検査キットがあります。なお、感染から24時間後から検査受付が可能です。

病院（男性）	泌尿器科、性病科
病院（女性）	婦人科（産婦人科）、性病科
保健所	各都道府県の保健所 ※各保健所では無料で性病検査を行っていますが、月1回ほどしか検査日が設けていないケースも多く、さらに検査項目が少なくトリコモナスの検査を行っているか事前に確認が必要です。
性病検査キット	GME医学検査研究所・アルバコーポレーション（STDチェッカー）・ふじメディカル・さくら検査研究所・予防会 ※検査キットを使用した郵送検査を行います。ご自身で検体を採取し、専用の容器に保管してポストに投函し検査所で検査が行われます。後日、スマホやパソコン等で検査結果を確認します。 参考：各性病キットメーカーの比較はこちら≫

トリコモナスの検査料金

トリコモナスの検査料金についてです。病院で検査する場合は、症状が出ているケースは保険適用となり、無症状の場合は保険適用外となります。保険適用の有無によって料金に差がありますので注意が必要です。

病院	診察代：3,000円～5,000円 検査代：3,000円～5,000円 初診料（再診料）：1,000円～2000円（200円～1,000円） 合計：7,000円～12,000円程度 ※上記の金額は保険適用外で算出しています。症状がある場合は保険適用になり3割負担となります。
保健所	基本的に無料 ※トリコモナスの検査を行っていない保健所もありますので事前に確認しましょう。
性病検査キット	3,500円～5,000円 ※性病検査キットをお考えの方は『性病検査キットを選ぶ前に知っておきたい５つのポイント』を参照してください。

トリコモナスの治療方法・治療薬について

トリコモナスの治療は、主に抗原中作用がある薬を服用します。原因となるトリコモナスを駆除することができれば、トリコモナス症は完治したといえるでしょう。

トリコモナスの治療薬はメトロニダゾール

トリコモナスの治療には、メトロニダゾールという抗原中作用があるお薬を服用します。このお薬は、抗トリコモナス薬です。トリコモナス原虫に対し殺虫的に作用し、トリコモナス原虫がいなくなれば、それによる不快な症状もなくなります。その他にも嫌気性菌などによる細菌性の腟症にも有効な治療薬です。

メトロニダゾールには、経口薬と膣薬があり、症状が酷い場合は経口薬と膣薬が併用される場合もあります。また、妊娠中の経口投与には胎児への影響の可能性があるため、一般的には妊婦への経口投与は避けられます。妊娠初期では腟洗浄と腟剤の挿入のみで治療が行われます。

トリコモナスの治療期間

トリコモナスの治療期間は、基本的におおよそ10日間です。通常、成人はメトロニダゾールを、1回250mgを1日2回、10日間経口服用することでほとんどの場合トリコモナス症が完治するでしょう。

トリコモナスが完全に体から駆除できないうちに治療を止めてしまうとすぐに増殖して症状が悪化するため完全に陰性判定を受けるまで治療を続けます。治療薬の服用期間が終わったら、必ず再検査を行い陰性判定を確認しましょう。

トリコモナスの治療費

トリコモナス治療薬の費用は約3,000円～4,000円程度でしょう。

診察料や検査料、治療薬を含めると合計で10,000円～20,000円（保険適用外）。自覚症状があり保険適用での診察の場合は治療薬込みで5,000円～8,000円でしょう。もちろん病院によっても異なりますので目安にしていただければと思います。

また、抗生剤を毎日服用することをサボってしまうと治療期間が伸び、再検査や薬の投与が長引く原因となり料金が上乗せされますので、しっかり完治するまで治療を続けましょう。

トリコモナスの症状まとめ

トリコモナスはクラミジアや淋病の菌が原因の性病とは異なり微生物が原因の性病です。

トリコモナスは、女性に強い症状が出ることが多く、黄緑色の泡状で強いニオイがするおりものが出ることが特徴です。しかし、男女とも症状がでない人も多く気付かないうちにパートナーに移してしまうことや、知らない間に重症化するケースがあり治療に時間がかかることも。

また、トリコモナスに感染している方は、炎症部分より他の性病の感染リスクも高まります。性病の併発していことがあるため、複数感染も視野に入れての検査や治療が必要です。

『もしかしてら性病かも？』と思ったら、必ず病院で検査してみましょう。症状がない、またはその症状が性病なのか知りたい方は、念のため病院や検査キットでの検査を検討してみてはいかがでしょうか。