C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気です。肝炎を起こすウイルスはA型、B型、C型、D型、E型とありますが、そのうちのC型のウイルスが原因で起こる疾患です。
また、C型肝炎ウイルスは、血液や体液を介して感染します。性行為の中では、特に出血を伴いやすいアナルセックスはリスクの高い行為です。
今回は、C型肝炎の症状や感染経路、検査方法や治療方法について詳しく解説したいと思います。
C型肝炎の症状や感染経路について
C型肝炎の主な症状と潜伏期間
実は、C型肝炎ウイルスに感染しても、症状が表れない人も多いことが現状です。自覚症状の多くは『体が少しだるい・食欲がない』という程度で、黄疸も出にくいため、気づかない人も多いのが特徴です。、2週間から6ヵ月を経て、急性の肝障害を起こします。
急性肝炎を発症すると採血検査での肝機能異常のほか、体のだるさ、黄疸(目や体が黄色くなる)、褐色尿、嘔吐、発熱などの症状が見られます。そして、C型肝炎ウイルスによる急性肝炎の初感染例のうち、半数以上の方に症状の慢性化が認められます。
慢性肝炎になると、初期には非活動期と呼ばれる期間に入ります。この非活動期では明らかな症状が現れることはありませんが、体内ではC型肝炎ウイルスが増殖しています。 その後10~15年経た後に、活動期へと移行し、血液検査上でも肝炎を思わせる異常値が示されます。また、倦怠感や食欲不振、吐き気などといった症状も現れ、慢性肝炎を放置すると、肝硬変や肝臓がんへと病状が進行していく危険性が高まります。
- C型肝炎ウイルスは、感染した人の精液や腟分泌液、血液などに含まれていますが、感染力が弱いので、性行為により感染することはほとんどありません。ほとんどの場合、血液を介した感染といわれています。
B型肝炎はここが怖い!
- ・C型肝炎ウイルス(HCV)が、血液を介して感染し、肝炎の原因となる。
- ・進行すると肝がんになることがある。
- ・気付かないうちに慢性化しやすいため注意が必要。
point. C型肝炎には症状がないことがほとんどです。また症状があったとしても、通常の風邪のような症状だったり、だるさだけを感じるだけのことも。ただし、重症化するとかなり危険です。実際問題、症状だけではC型肝炎か判断できない場合も多いため、不安な場合は念のために検査しておきましょう。
急性C型肝炎とC慢性型肝炎がある
C型肝炎には『急性C型肝炎』と『C型慢性肝炎』があります。
C型肝炎ウイルスに感染後、自然にウイルスが排除されず慢性肝炎に移行しても無症状の場合が多いため、気付かないうちに肝硬変や肝がんに進行することがあります。
急性C型肝炎 |
そもそもC型肝炎は、C型肝炎ウイルスが血液を介して感染し、肝臓で増殖することによって起きる病気です。肝増の細胞内でC型肝炎ウイルスが増えると、免疫がこれを排除しようと働き、ウイルスに感染している肝細胞まで破壊してしまいます。その結果、それまで正常だった肝臓に急性の炎症が起こり、急性肝炎を発症してしまうのです。それが急性C型肝炎です。 通常、しばらくすると肝炎は自然に軽快しますが、C型肝炎ウイルスが身体から完全に排除されず、肝臓にすみついてしまうことがあります。こうなることで、高い確率で持続感染状態になってしまいます。つまり、ウイルスが体内にとどまり、長期間感染状態が持続してしまうのです。これがC型肝炎キャリアの状態。キャリアに移行する率は約70%と高率です。 放置すると本人が気づかないうちに、慢性肝炎と進展するリスクがあるので、注意が必要です。 |
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C型慢性肝炎 |
C型慢性肝炎とは、C型肝炎ウイルスに感染することで慢性的に引き起こされる肝臓の炎症を指します。 初期の段階では特に目立った症状が現れることはありません。しかし、体内ではウイルスが増殖しており長い期間を経て症状が現れはじめます。 C型慢性肝炎は急性C型肝炎後、ウイルスが体の外に排出されないなどの原因で起こることがあります。そして、肝硬変、さらには肝がんに至ることもあるため注意が必要です。 |
point. 感染を放置していると、慢性肝炎から肝硬変・肝がんへと進行していく危険性があります。特に、肝臓がんの約80%はC型肝炎が原因と言われています。
C型肝炎の遺伝子型とは
C型肝炎ウイルスは、同じ「C型肝炎」の中にも大きく分けて6つの遺伝子型(ジェノタイプ)に分類されます。このうち、日本では「1b」という遺伝子型が全体の約70%を占めています。次いで「2a」という遺伝子型が約20%、「2b」という遺伝子型が約10%となっています。これ以外の型はごく稀とわかっています。
C型肝炎の主な感染経路
C型肝炎ウイルス(HCV)は、主としてC型肝炎ウイルスに感染している人の血液が直接体内に入ることによって感染します。しかし、現在の日本では、新規のHCV感染者の発生は少ないといえる状況です。
- C型肝炎感染者との注射針や注射器の共有
- C型肝炎陽性者の血液との接触(特に医療従事者)
- ピアスの穴開けやカミソリなどの共有
- 輸血や臓器移植
- 母子感染
- 性行為(特に出血を伴いやすいアナルセックス)
point. C型肝炎の感染は、性行為による感染の可能性はありますが、感染率は低いと考えられます。血液によって感染するので、出血しやすいアナルセックスは比較的リスクが高いと考えられます。
C型肝炎の検査方法やその費用について
C型肝炎は、症状があまりあらわれないことが多く、気付いたら肺がんなどのリスクがあるとても怖い病気なため、必ず検査しておきたい性病の1つです。C型肝炎の検査方法や検査が可能な場所や検査費用について説明します。
C型肝炎の検査の流れ
一般的に、C型肝炎ウイルスの感染を調べる方法は、血液検査において「HCV抗体検査」を行います(スクリーニング検査)。
この検査では、「現在、感染している人」と「過去に感染し、治っている人」の両方で陽性(+)と出ます。そのため、陽性(+)となった場合は、次の「ウイルス遺伝子検査」を受けて、現在感染しているかどうかを調べます。
HCV抗体検査で(-)陰線判定 |
感染機会から3ヵ月~経6ヵ月で検査可能です。過後の検査結果が(-)陰性判定の場合、C型肝炎に感染していません。 感染機会から早いタイミングでの検査の場合は、数か月後もう一度検査を受ける必要があります。 |
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HCV抗体検査で(+)陽性判定 |
(+)陽性判定が出た場合は、B型肝炎ウイルスに感染している可能性が濃厚です。ただし、過去に感染しただめに「抗体」ができているため、それが原因で陽性判定が出た可能性もあります。 現在感染しているか確認するために、ウイルス遺伝子検査「核酸増幅検査」などでより詳しく調べていきます。 |
核酸増幅検査とは、HCVの遺伝子(RNA)の一部を増幅させて検出する検査法で、検体(血清)中の微量のHCVを検出できる。この方法は感度、定量性ともに優れており、核酸増幅検査で(+)陽性判定が出たら治療へ進みます。
point. 抗原と抗体の違いとは?
抗原:ウイルス(病原体)を構成するタンパク質でありウイルスそのもののこと。
抗体:抗原(ウイルスを構成するタンパク質)に対応して作られ、感染力や毒性を失わせる働きを持つタンパク質のこと
C型肝炎の検査ができる場所や方法について
C型肝炎の検査が可能な場所は、主に病院か保健所、郵送検査である性病検査キットがあります。なお、感染機会からおおむね3ヵ月から6ヵ月程度で検査受付が可能で、検体採取方法は採血です。
病院(男性) | 内科、性病科 |
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保健所 |
各都道府県の保健所 ※各保健所では無料で性病検査を行っていますが、月1回ほどしか検査日が設けていないケースも多く、さらに検査項目が少なくB型肝炎の検査を行っているか事前に確認が必要です。 |
性病検査キット |
GME医学検査研究所・アルバコーポレーション(STDチェッカー)・ふじメディカル・さくら検査研究所・予防会 ※検査キットを使用した郵送検査を行います。ご自身で検体を採取し、専用の容器に保管してポストに投函し検査所で検査が行われます。後日、スマホやパソコン等で検査結果を確認します。 |
point. 何かしらの症状がすでに強く出ている場合は必ず病院で検査しそのまま治療を行いましょう。
症状が軽くて、それがC型肝炎の症状かわからない、感染機会があったため『念のため』検査しておきたい方は、性病検査キットを利用することで病院へ行くことなく検査できます。
性病は自然治癒がほぼできないため、早期発見・治療のためにもまずは検査することが大切です。『性病検査キットとは?6つのメリット解説!』をご覧ください。
C型肝炎の検査料金
C型肝炎の検査料金についてです。病院で検査する場合、症状が出ているケースは保険適用となり、無症状の場合は保険適用外となります。保険適用の有無によって料金に差がありますので注意が必要です。
病院 |
診察・検査費用:約8,000円(HCV-RNA測定は約16,000円) 初診料(再診料):1,000円~2000円(200円~1,000円) 合計:10,000円~20,000円程度 ※上記の金額は保険適用外で算出しています。また、抗体検査とウイルス遺伝子検査では料金が大きく異なります。 |
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保健所 |
基本的に無料 ※C型肝炎の検査を行っていない保健所もありますので事前に確認しましょう。 |
性病検査キット |
3,500円~5,000円 ※性病検査キットをお考えの方は『性病検査キットを選ぶ前に知っておきたい5つのポイント』を参照してください。 |
point.検査にかかる費用は一般的な料金です。実際の検査では、C型肝炎だけではなく他の性病や感染症の疑いが否定できないため同時に何種類かの性病検査を行うことが通常であり、上記の金額よりも費用がかかることが通常です。
どこで検査してもらうか悩む方は『検査キットの信頼性と病院・保健所との検査精度や費用を徹底比較』を参照してください。
C型肝炎の治療方法・治療薬について
C型肝炎の治療には、B型肝炎と同様に、抗ウイルス薬の服用とインターフェロンの注射による治療があります。C型肝炎の場合は、C型肝炎ウイルスを完全に体内から排除することを目的としています。
C型肝炎の治療方法
治療方法 | 説明 |
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抗ウイルス療法 | インターフェロン療法などがあり、抗ウイルス作用や免疫増強作用、抗腫瘍作用などがあるインターフェロンでHCVの排除を目的とした治療法。 |
肝庇護療法 | 強力ネオミノファーゲンシーの静注やウルソデオキシコール酸の内服などがあり、免疫力の増強や抗炎症作用の薬剤を用いて肝機能を改善することを目的とした治療法。 |
まず、抗ウイルス療法により、HCVを駆除して完全治癒を図りますが、総合的に判断して、抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や、抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合には肝庇護療法を行います。
point.適切な治療を行えば、C型肝炎ウイルスは、肝臓から完全に排除することも可能になっています。
C型肝炎の治療薬
最初の治療として使われる抗ウイルス薬は、2014年以降、次々と新しいタイプが登場しており、かつてインターフェロン治療で改善しなかったような人もほぼ治せるようになってきました。
1b型 |
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2a+2b型 |
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すべての型 |
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新しい抗ウイルス薬が続々と登場していることで、適切な治療ができればC型肝炎の患者さんの95%以上は完治できるようになりました。ただし、複数ある新しい抗ウイルス薬は慎重に選ばなくてはなりません。ウイルスの遺伝子型は、1a、1b、2a、2bの4タイプがあり、それぞれに合った抗ウイルス薬を使用しなければ効果が期待できないからです。
C型肝炎の治療期間
治療期間については、どの程度の状態なのかで大きく変わってきます。今現在使われているインターフェロンフリー治療は、おおよそ治療期間は3~6ヵ月間といわれておりますので、この期間を参考にするといいでしょう。
C型肝炎は治療後も(+)陽性判定がでることも
HCV抗体は、C型肝炎ウイルスに感染すると体内で作られる抗体です。一度感染すると、治った後も陽性(+)の状態が続きます。
医師から治ったとの診断を受け、その後感染の機会が無ければ、特に心配することもないでしょう。もし、治療後に感染機会があり、現在の状態について調べたい場合は、医療機関を受診してみましょう。
C型肝炎の症状・検査方法まとめ
C型肝炎は、いくつかの種類がある肝炎ウイルスの中の『C型』によって発症する肝炎のことです。
肝炎とは肝臓疾患の一種であり肝臓に炎症が発生することで細胞が破壊されていき、破壊された部分から硬化して機能低下が始まります。この肝臓の炎症が半年以上続く場合は慢性肝炎という扱いになり、急激に肝機能が低下してしまうような肝炎は急性肝炎となります。
また、C型肝炎ウイルス(HCV)は、血液や体液で感染します。感染機会に心当たりがある方は、『念のため』血液検査を検討してみてはいかがでしょうか。