B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)が性行為などで感染して起きる肝臓の病気で、倦怠感や食欲不振、赤褐色尿(赤茶色の尿)や黄疸などの症状を引き起こします。感染が起った後の多くは自然回復しますが、一部は持続的な肝炎になります。また、まれに劇症肝炎という重篤な状態になるので注意が必要です。
今回は、B型肝炎の症状や感染経路、検査方法や治療方法について詳しく解説したいと思います。
B型肝炎の症状や感染経路について
急性B型肝炎と慢性B型肝炎がある
B型肝炎には『急性B型肝炎』と『慢性B型肝炎』があり、急性B型肝炎は主に、成人が初めてB型肝炎ウイルスに感染して発病するもので、慢性B型肝炎はB型肝炎ウイルスに持続感染している人が発病するものです。
日本での急性B型肝炎の多くは、性感染症(STD)と考えられていますが、性行為によって感染する急性B型肝炎の実数、感染率などは明らかになっていないとのことです。
B型肝炎の主な症状と潜伏期間
B型肝炎ウイルスに感染すると、1ヵ月~6か月の潜伏期間を経て約30%の人が急性肝炎となり、黄疸、発熱、倦怠感、発熱、右背中の痛みなどが見られます。ほとんどは自然に治ってしまうのですが、約2%の人に肝炎が急速に進行し、肝臓が数日で機能しなくなる劇症肝炎があります。劇症肝炎になってしまうと死亡率が70%と重症な肝炎です。
種類 | 主な症状 |
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B型肝炎に初めて感染 |
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急性B型肝炎 |
※ウイルス感染後に急性B型肝炎を発症することで、このような症状が出ることがあります。 |
B型肝炎の重症化 |
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B型肝炎はここが怖い!
- B型肝炎ウイルスは性行為で感染し肝炎の原因に
- B型肝炎が進行すると肝がんになることも
- 慢性化しやすいタイプのB型肝炎ウイルスが増加傾向
point. B型肝炎には症状がないことがほとんどです。また症状があったとしても、通常の風邪のような症状だったり、だるさだけを感じるだけのことも。ただし、重症化するとかなり危険です。
実際は症状からだけではB型肝炎か判断できない場合も多いため、不安な場合は念のために検査しておきましょう。
一過性感染と持続感染
B型肝炎ウイルス(HBV)の感染には、感染した後に、『一定期間を経てウイルスが体から排除されて治癒する一過性感染』と『ウイルスが長期に渡って体(肝臓)に存在し続ける持続感染(HBVキャリア)』の2つの感染様式があります。
成人が初めてHBVに感染した場合は、ほとんどは一過性感染です。治癒後は、一度感染すると再びその病気にかからなくてすむ状態の『終生免疫』を獲得することで、再度B型肝炎ウイルス(HBV)に感染して発症することはありません。
一方、持続感染とは、ウイルスが排除されずウイルスを体内に保有した状態のことを指します。免疫機能が未熟な乳幼児、透析患者さん、免疫抑制剤を使用している方などがB型肝炎ウイルスに感染すると、免疫機能がウイルスを異物と認識できないため肝炎を発症しないことがあり、その結果、体内のウイルスが排除されないケースがあります。
B型肝炎の主な感染経路
B型肝炎ウイルスは、主にB型肝炎ウイルス感染者の血液や体液で感染します。型肝炎ウイルスは、HIV(エイズ)やC型肝炎ウイルスよりも感染力が強いといわれているため注意が必要です。
また、出血を伴いやすいアナルセックスやコンドームなしでの性行為は感染リスクが非常に高いと言われています。日本での感染の多くは、性行為が原因といわれていますが、以下のような感染経路もあり、B型肝炎の感染は『垂直感染』と『水平感染』に分けられています。
- 出生時の母子感染
- 母親が妊娠中に子宮内、産道で感染
- 性行為などの濃密な接触
- 静注用麻薬の乱用(注射器の使いまわし)
- 刺青やピアスの穴あけ
- 不衛生な器具による医療行為
- 出血を伴うような民間療法
- カミソリなどの使いまわし
point. B型肝炎ウイルス持続感染者をHBVキャリアといいます。成人での感染はキャリアのパートナーとの性交渉、注射器の使い回しなどの血液や体液を介した場合が主な感染源といわれています。
B型肝炎の検査方法やその費用について
B型肝炎は、必ず検査しておきたい性病の1つです。B型肝炎の検査方法や検査が可能な場所や検査費用について説明します。
B型肝炎の検査の流れ
B型肝炎の検査は、血液検査を行い、最初に「HBs抗原」を調べます(スクリーニング検査)。
HBs抗原検査で(-)陰線判定 | 感染機会から3ヵ月以上経過後の検査結果が(-)陰性判定の場合、B型肝炎に感染していません。 |
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HBs抗原検査で(+)陽性判定 | (+)陽性判定が出た場合は、B型肝炎ウイルスに感染しているため、より詳しい検査を行うため、HBc抗原・抗体検査に進みます。 |
HBs抗原が陽性であれば、次にHBe抗原とHBe抗体を調べることになります。
一般にHBe抗原陽性かつHBe抗体陰性の場合は、HBVの増殖力や肝炎の程度が強く、家族やパートナーはもちろん、他人への感染の可能性が高いと考えられます。一方、HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性の場合は、HBVの増殖は弱く肝炎は鎮静化し、他の人への感染の可能性が低いことが多いと考えられます。
中にはHBe抗体が陽性になっても、肝炎が徐々に進行して肝硬変になったり、あるいは肝炎が進行しなくても肝がんが発生したりすることがありますので、定期的な血液検査や超音波検査やCT検査などの画像検査が必要となります。
point. 抗原と抗体の違いとは?
抗原:ウイルス(病原体)を構成するタンパク質でありウイルスそのもののこと。
抗体:抗原(ウイルスを構成するタンパク質)に対応して作られ、感染力や毒性を失わせる働きを持つタンパク質のこと
B型肝炎の検査ができる場所や方法について
B型肝炎の検査ができる場所は、主に病院か保健所、郵送検査である性病検査キットがあります。なお、感染機会からおおむね3ヵ月から検査受付が可能で、検体採取方法は採血です。
病院(男性) | 内科、性病科 |
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病院(女性) | 内科、性病科 |
保健所 |
各都道府県の保健所 ※各保健所では無料で性病検査を行っていますが、月1回ほどしか検査日が設けていないケースも多く、さらに検査項目が少なくB型肝炎の検査を行っているか事前に確認が必要です。 |
性病検査キット |
GME医学検査研究所・アルバコーポレーション(STDチェッカー)・ふじメディカル・さくら検査研究所・予防会 ※検査キットを使用した郵送検査を行います。ご自身で検体を採取し、専用の容器に保管してポストに投函し検査所で検査が行われます。後日、スマホやパソコン等で検査結果を確認します。 |
point. 何かしらの症状がすでに強く出ている場合は必ず病院で検査しそのまま治療を行いましょう。
無症状または、それがB型肝炎の症状かわからない場合、感染機会があったため『念のため』検査しておきたい方は、性病検査キットを利用することで病院へ行くことなく検査できます。
性病は自然治癒がほぼできないため、早期発見・治療のためにもまずは検査することが大切です。『性病検査キットとは?6つのメリット解説!』をご覧ください。
B型肝炎の検査料金
B型肝炎の検査料金についてです。病院で検査する場合、症状が出ているケースは保険適用となり、無症状の場合は保険適用外となります。保険適用の有無によって料金に差がありますので注意が必要です。
病院 |
診察・検査費用:3,000円~5,000円 初診料(再診料):1,000円~2000円(200円~1,000円) 合計:4,000円~7,000円程度 ※上記の金額は保険適用外で算出しています。 |
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保健所 |
基本的に無料 ※B型肝炎の検査を行っていない保健所もありますので事前に確認しましょう。 |
性病検査キット |
3,500円~5,000円 ※性病検査キットをお考えの方は『性病検査キットを選ぶ前に知っておきたい5つのポイント』を参照してください。 |
point.検査にかかる費用は一般的な料金です。実際の検査では、B型肝炎だけではなく他の性病や感染症の疑いが否定できないため同時に何種類かの性病検査を行うことが通常であり、上記の金額よりも費用がかかることが通常です。
どこで検査してもらうか悩む方は『検査キットの信頼性と病院・保健所との検査精度や費用を徹底比較』を参照してください。
妊婦さんでも検査は可能?
B型肝炎ウイルスに感染している女性が出産した場合、母子感染、つまり子どもに感染する可能性があります。妊婦健診で調べられますので、感染機会がある方は特にですが、必ず検査受けましょう。
ワクチンを接種している人も検査できる?
B型肝炎の検査の中でも「HBs抗原」で調べる検査に場合、B型肝炎ワクチンによる抗体の影響は受けないため検査可能です。ただし、ワクチンが効いていたら感染しないので、その場合は受ける必要は基本的にはないと言えます。
B型肝炎予防接種について
2016年10月から、B型肝炎ワクチンが定期接種化されました。0歳児に限り、公費(無料)で接種を受けられます。生後2ヶ月から接種可能で、接種回数は3回です。
- 1回目:生後2ヶ月から (家庭内の感染リスクが疑われる場合は生後直後)
- 2回目:1日目の接種から4週あけて接種
- 3回目:2回目の接種から16週-20週あけて接種
B型肝炎の治療方法・治療薬について
急性B型肝炎は、ほとんどの人が完全に治癒します。
しかし、急性B型肝炎を発症した場合、ごくまれに劇症化(黄疸・吐き気・嘔吐が持続し、だるさが強くなるなど)して、死亡する場合もあることから慎重に経過観察をする必要があります。
HBVキャリアからの発症による慢性肝疾患(慢性肝炎、肝硬変など)では、年齢やウイルス量、肝臓の状態などを考慮して治療が選択されます。
B型肝炎の治療方法
治療方法 | 説明 |
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抗ウイルス療法 | インターフェロン療法などがあり、抗ウイルス作用や免疫増強作用、抗腫瘍作用などがあるインターフェロンでHBVの排除を目的とした治療法。 |
肝庇護療法 | 強力ネオミノファーゲンシーの静注やウルソデオキシコール酸の内服などがあり、免疫力の増強や抗炎症作用の薬剤を用いて肝機能を改善することを目的とした治療法。 |
免疫療法 | ステロイドリバウンド療法。ステロイドを使用し免疫機能を低下させ、その後、使用を急に中止して免疫機能を活性化させてHBVを攻撃する方法。 |
point.いずれの治療法も、経過をみながら副作用などにも注意して慎重に行う必要があります。そのため、医師とよく相談し、肝臓の状態や全身状態を的確に把握した上で、治療法の選択、実施にあたることが大切です。
B型肝炎の治療期間
B型肝炎の治療期間は、抗ウイルス療法の場合は半年から1年くらいと言われております。しかし、それでも治らないケースがあり、短期間の内服治療ではなかなか回復が見込めないようです。
その場合は、長期間の内服が基本となり、治療期間が具体的に提示できないようになってしまいます。治療期間は状況次第の所もありますが、できる限り早めに検査を行い治療を開始すれば早く治り、検査や治療開始が遅ければ遅いほど長期化する傾向になるということが一般的と言えるでしょう。
point. 特定のパートナーが感染している場合は、感染していない人がワクチンを接種することで、感染防止策となります。
B型肝炎の治療薬とは
B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖に必要な酵素の働きを阻害し抗ウイルス作用をあらわす薬が使用されます。
一般的なB型肝炎の治療薬には、バラクルード、ヘプセラ、テノゼット、ベムリディなどがあります。
point. B型肝炎の治療薬の詳細はこちら≫
B型肝炎の症状・検査方法まとめ
B型肝炎は、いくつかの種類がある肝炎ウイルスの中のB型によって発症する肝炎のことです。
肝炎とは肝臓疾患の一種であり肝臓に炎症が発生することで細胞が破壊されていき、破壊された部分から硬化して機能低下が始まります。この肝臓の炎症が半年以上続く場合は慢性肝炎という扱いになり、急激に肝機能が低下してしまうような肝炎は急性肝炎となります。
B型肝炎ウイルスは、血液や体液で感染します。感染機会に心当たりがある方は、一度『念のため』にも血液検査を検討してみてはいかがでしょうか。