カンジダは、健康な人でも体内に存在することがあるカビ(真菌)の一種で、女性には頻繁にみられる疾患です。主に体調の変化で膣内環境のバランスが崩れて発症します。また、過度の膣内洗浄や、強い抗生物質の服用により膣内環境のバランスが崩れてカンジダ症を発症するケースも増えています。
カンジダ症とは?
カンジダは女性の膣内でカンジダが増殖した状態での性行為により、男性の陰部(ペニス)に感染することがあります。ここではカンジダ症の原因菌と主な症状をまとめています。
カンジダ症は性病ではない?原因はカビ(真菌)だった
腟カンジダ症とは「カンジダ」という腟内の常在菌が異常に増殖することにより、陰部のかゆみやおりものの変化を引き起こす疾患です。
通常、腟内は「デーデルライン桿菌」という乳酸菌の働きによって弱酸性に保たれており、カンジダ菌などの常在菌が異常に繁殖しすぎることのないよう、また、外部から入ってくる雑菌を繁殖させないようにバランスを保っています。
カンジダ菌が異常に増殖してしまうのは、このデーデルライン桿菌の働きが弱まることが主な原因です。つまり、腟カンジダ症の発症に性行為はあまり関係ないことが多く、性行為の有無に関わらず女性の約5人に1人は経験する非常にポピュラーな疾患なのです。
カンジダ症の主な感染経路
カンジダ症は、女性の場合、体調の変化で膣内環境のバランスが崩れて発症しますので、性行為の経験がない方でも発症します。女性に比べて、男性が感染することは比較的少ないと言われていますが、カンジダ菌が増殖した女性との性行為(セックス)によって、男性も感染し症状が出ることがあります。
カンジダ症の主な症状と潜伏期間
カンジダ症の潜伏期間は1日~1週間前後といわれています。女性のおもな症状は膣炎や外陰炎になりますが、双方が合併して発症することが多くみられることがわかっています。
- 掻痒感(かゆみ)
- 発赤
- 赤い発疹(ぶつぶつ)
- 小さな水疱
- びらん(ただれ)
- 浸軟(皮膚がふやけている状態)
- 白苔(皮が白くはがれる)
男性器にカンジダを保有していても、男性は自覚症状が少なく気付かないことも多いです。包茎など汚れをため込みやすい方や、糖尿病・ステロイド剤投与、消耗性疾患(体力が消耗されやすい疾患)などがある場合はカンジダ症を発症しやすいとわかっており、主な症状は、亀頭包皮炎で、まれに尿道炎を起こすことがあります。
- おりものの増加
- 外陰部や膣の強い掻痒感(かゆみ)
- 白色で酒粕状、粥状、ヨーグルト状のおりもの
- 外陰部や膣の炎症(灼熱感、痛み)
- 性交痛
- 排尿障害
外陰膣カンジダ症の典型的な症状は、外陰部のかゆみとおりものの変化です。ひどい時は排尿時の痛みへつながる場合もあり、おりものの量が増え、臭いも強くなります。
カンジダ症を発症する主な原因一覧
カンジダ症を発症する原因はさまざまです。適切な治療を行えば短期間で治癒しますが、発症原因となる生活習慣を持っている人は再発を繰り返しやすい傾向にあり、慢性化する場合がありますの注意が必要です。
体調不良や過労、ストレスなど
過労やストレスによって体力・免疫力が低下し、菌に対する抵抗力が弱くなると、カンジダが異常増殖し発症することがあります。また、膣内を洗いすぎることで、膣内の環境変化によりカンジダを発症するケースがあります。
セックス(性行為)による刺激や摩擦
セックス(性行為)の4日~5日後にカンジダを再発してしまう方もいます。性行為による膣の摩擦などで膣炎をおこし、膣内環境の変化から再発してしまう可能性があります。
月経前やピルの服用
ホルモンバランスの変化により膣内が酸性に傾きやすくなると、カンジダが異常増殖する場合があります。
抗生物質の服用やステロイド剤などの薬剤投与
抗生物質によって普段膣内に定住している常在菌が死滅すると、膣内の正常な状態における微生物集団のバランスが崩れ、真菌であるカンジダが異常増殖する場合があります。また、ステロイド剤、制癌剤などの薬剤投与、糖尿病などが原因となる場合があります。
通気性の悪い下着の着用や陰部の蒸れ
適度に温かく湿気の多い環境は、カンジダにとっては条件の良い増殖場所となります
カンジダ症の検査について
カンジダ症を放置してしまうと、女性は痒みがより強くなる場合や、おりものの量の著しい増加、外陰部の炎症が広範囲に及ぶなどの可能性があります。男性は患部の痒みや痛み、ただれなどの症状が継続し、悪化させてしまう可能性がありますので、陰部に異変を感じたら『念のため』検査することを推奨しています。
カンジダ症の検査方法
カンジダ症の検査では、患部の検体の採取などが必要で、性別や部位によって異なります。
検査方法 | 内容 |
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尿検査 | 男性の方で尿道症状があり、カンジダの検査を希望される場合は、尿を採取して尿培養検査を行います。 |
膣分泌検査 |
女性の方で膣症状があり、カンジダの検査を希望される場合は、医師が綿棒を使用して膣分泌物を採取し培養検査を行います。 ※生理中は検査ができません。 |
皮膚摩擦検査 | 陰部に皮膚症状があり、カンジダの検査を希望される場合は、綿棒を使用して皮膚や病変からでた擦過物を採取し、培養検査を行います。 |
カンジダの検出法は、主に、培養法や鏡検法、核酸増幅法(PCR法)などがあります。
検査方法 | 内容 |
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培養法 | 膣内容物や陰茎表皮擦過物を検体として、サブローブドウ糖寒天培地やクロモアガーカンジダ培地を用いて培養し判定します。クロモアガーカンジダ培地は、色調によりカンジダ属の鑑別ができ、1~2日で判定可能。その他、簡易培地では、2~3日で判定が可能です。 |
鏡検法 |
主に、生鮮標本鏡検法と染色標本鏡検法があります。 生鮮標本鏡検法とは、スライドグラス上に生理食塩水を1滴落とし、膣内容の一部を混ぜてカバーグラスを覆って、顕微鏡で観察する方法です。 染色標本鏡検法とは、グラム染色標本を顕微鏡で観察する方法です。簡便で迅速性に優れており、パパニコロウ染色標本でもカンジダの菌量によっては検出が可能。 |
核酸増幅法(PCR法) | 採取した検体から、カンジダの遺伝子を増幅して検出する方法です。 |
カンジダ症の検査を受けれる医療機関と検査費用
カンジダ症の検査を受けることのできる医療機関は、主に病院や保健所、検査キットを用いた郵送検査の3種類あります。以下でそれぞれの特徴をまとめましたので参照してください。
検査方法 | 内容と特徴 |
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病院 |
病院:泌尿器科・皮膚科・婦人科・性病科 診察料:約3,000円 検査料:約4,000円 ※病院での検査は診察料と検査料がかかり、初診料や薬代は別途必要です。また、上記は保険適用外の金額の目安です。症状がある場合は保険適用となり3割負担となりますが、症状がない・軽い場合は保険適用にならないケースがあります。 |
保健所 |
各都道府県の保健所で検査可能で、検査費用は基本的には無料です。 ※保健所での検査は料金がかからないことはメリットですが、検査日が月1~2回などその保健所によって決まっており、さらに検査項目が少なく、保健所によってはカンジダの検査を行っていない場合があるため事前に確認が必要です。 |
郵送検査 |
郵送検査メーカー:GME医学検査研究所・ふじメディカル・アルパコーポレーション(STDチェッカー)・さくら検査研究所・予防会など 検査費用:約5,000円 ※性病検査キットを用いて自分で検体を採取し、郵送でカンジダ症やさまざまな性病の匿名検査が可能です。病院へ行くことに抵抗がある方や、症状が軽く念のため検査を受けておきたい方向けです。 |
point.カンジダ症は他の性病と複数感染している可能性もあります。
保健所は無料ですがスケジュール調整が難しいため、病院か郵送検査を推奨しています。症状が強く出ている場合は、なんらかの性病に感染していると思われますのですぐに病院で受診してください。
しかし、病院へ行くことに抵抗があるかも多いと思います。性病ではない可能性も含め、症状がない・軽い場合は、郵送検査を検討してみてはいかがでしょうか。
カンジダ症の治療について
カンジダ症の検査を受け、陽性判定(+)が出た場合は治療を行います。このページではカンジダ症の治療方法や治療薬について説明します。
カンジダ症の治療方法と治療期間
カンジダは常在菌の為、菌を完全になくすことは難しいですが、治療をして菌の量を減らしてくことは出来ます。菌の量を減らしていくことで症状を抑えていきます。カンジダ症の治療は、局所の清潔を保ち、医師の指示に従って治療を行い再発を防ぐことが大切です。
男性 | 抗真菌剤の軟膏、クリームの塗布 |
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女性 | 膣錠または抗真菌薬の内服や軟膏 |
point.治療期間は症状にもよりますが、おおむね1週間~2週間が目安です。
治療判定について
治療により、かゆみや発赤、おりものの異常などの症状が消失したことを確認します。
カンジダは常在菌のため、カンジダが少数存在していても、症状が消失すれば、治癒とみなします。
カンジダ症の治療薬
治療には主にカンジダに対して抗菌力のある外用薬が使われます。カンジダ性爪囲爪炎、口腔カンジダ症などの病型や難治性・広範囲の皮膚カンジダ症では内服薬を用います。
◆カンジダ症で使用される外用薬
商品名 | 一般名とタイプ |
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アスタット |
一般名:ラノコナゾール(イミダゾール系) タイプ:軟膏、クリーム、液 |
アトラント |
一般名:塩酸ネチコナゾール(イミダゾール系) タイプ:軟膏、クリーム、液 |
エンピシド |
一般名:クロトリマゾール(イミダゾール系) タイプ:クリーム、膣錠 |
ニゾラール |
一般名:ケトコナゾール(イミダゾール系) タイプ:ローション、クリーム |
ルリコン |
一般名:ルリコナゾール(イミダゾール系) タイプ:クリーム、液 |
ラミシール |
一般名:塩酸テルビナフィン(アリルアミン系) タイプ:クリーム、液、スプレー |
point.イミダゾール系のものが、カンジダに対しても有効性が高く、第一選択薬とされています。
◆カンジダ症に使用される内服薬
商品名 | 一般名とタイプ |
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イトリゾール |
一般名:イトラコナゾール(トリアゾール系) タイプ:カプセル、内用液 |
ファンギソン |
一般名:アムホテリシンB(ポリエン系) タイプ:シロップ(嚥下またはうがい) |
ジフルカン |
一般名:フルコナゾール(トリアゾール系) タイプ:カプセル |
フロリードゲル |
一般名:ミコナゾール(トリアゾール系) タイプ:経口用ゲル |
ナイスタチン |
一般名:ナイスタチン(ポリエン系) タイプ:錠 |
point.トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール®)は様々な真菌に効果があり、第一選択薬となります。副作用は比較的少ないのですが、他の薬との併用で効果の増強・減弱を起こす可能性があり注意する必要がある薬剤です。他の薬を使用中の方は医師・薬剤師にご相談ください。
カンジダ症は市販薬でも大丈夫?
実は、カンジダの治療薬は薬局でも市販されています。市販薬を使い自分で治すことも悪いことではありませんが、使用しても症状が改善されい、または悪化した、というようでしたら医療機関を受診しましょう。他の病気(細菌性膣炎・膣トリコモナス症など)の可能性もありますので注意が必要です。
また、薬局で販売されているカンジダの薬は、腟カンジダ症を「再発した方」むけのお薬です。医師から腟カンジダ症との診断を受け、治療をうけたことがある方に限り薬局で購入できます。もし、これまでに医療機関における腟カンジダ症の治療のご経験がない場合は、まずは婦人科を受診することを推奨しています。
point.カンジダは真菌(カビ)のため治療には『抗菌薬(抗生剤)』を使用します。例えば、クラミジアなどは菌が原因なので体内から除菌できる抗生物質を使用するため、他の性病の治療薬は異なり併用はできません。
カンジダ症の予防方法
性器カンジダ症は、性感染症として捉えることもできますが、カンジダはもともと性器周辺などに菌(常在菌)であり、日和見感染症(健康な状態では発症しないが、体力が低下するなどの状況で発症すること)でもあるとも心得ておく必要があります。
男性の予防法 |
※包茎・糖尿病・ステロイド剤使用が誘因になっている場合があるため注意が必要です。 |
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女性の予防法 |
※糖尿病・ステロイド剤使用が誘因になる場合があるため注意が必要です。 |
さいごに
カンジダは、発症している状態で性行為を行うことで、男性にも感染するため『性病』と捉えることもできますが、もともと体内にいる常在菌なため、性行為の経験がなくても発症してしまう病気です。そのため誰でもカンジダ症を発症する可能性があることを認識しておくことが大切です。